大判例

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東京高等裁判所 昭和56年(ネ)63号 判決

当審証人坂本育三の証言によれば、凌時弘は、かって岩手県下において二〇年くらい医業に従事していたが、昭和五一年一二月八日より東京都足立区において産婦人科、内科、眼科の医院を開設するに至ったこと、右開設には多額の資金の借入を要したためその返済が意のままにならず、昭和五三年九月ころには手形の不渡処分を受けるに至ったこと、しかし、その後も凌は同所において前同様に診療業務を継続し、患者が途絶えたり、診療を長期にわたって休むなどのことはなかったことが認められ、右認定をくつがえすに足りる証拠はない。尤も、右証言中には、凌が不正な保険請求をしていたとか、誤診があり患者との間にトラブルが多かったとか、医院にレントゲンの設備を欠いていたとかの部分があるが、これらの点に関して他に確たる証拠もない以上、右証言部分をただちに採用することはできない。また、右証言中には凌の病院は正規な医療行為をなすだけの機能を有しないとの部分もあるが、右は確たる事実に基づかない推測の域を出でないものに過ぎず、採用できない。かえって、前記認定のとおり凌は昭和五三年九月以降も診療業務を通常の状態で継続していたのであって、同人が通常の診療業務を継続しえないような特段の事情が存したと認めることはできない。成立に争いのない甲第四号証の記載その他の証拠を検討しても右特段の事情の存在を肯認するに足りない。

してみれば、凌時弘のした債権譲渡契約は、昭和五四年八月一日から同六四年九月末日までの診療報酬債権をその対象としたものであるが、そのうち本訴請求の対象となった昭和五四年一二月末日までの分については、それほど遠い将来のものとはいえないから、少くとも右の部分については有効と解するのが相当である。

(園部 宇野 川上)

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